9月18日、平成30年分の基準地価(平成30年7月1日時点の地価)が国土交通省より公表されました。
基準地価(都道府県地価調査)とは毎年7月1日時点での地価を都道府県が調査し国土交通省が発表する、用途別の1平方メートル当りの価格の事です。 公示地価(国土交通省)・路線価(国税庁)と共に土地取引の目安になっています。 本年は全国の住宅地・商業地等の21,091地点と林地487地点が調査対象となりました。 ただし、福島県内の福島第一原発に近い避難指示区域内の15地点では調査を休止しています。
今年の基準地価は全用途(住宅地や商業地、工業地など含めた用途)の全国平均価格が前年比0.1%上昇となり、実に27年ぶりのプラスとなりました。 用途別に見ると、商業地は昨年に引き続き本年は1.1%上昇と上昇を幅を広げ、一方住宅地は27年連続下落で下げ幅前年比0.3%となりましたが、 9年連続で対前年比下げ幅縮小となっています。
まずは商業地を見てみましょう。三大都市圏(東京・名古屋・大阪)と地方中核4市(札幌・仙台・広島・福岡) 及び有名観光都市(京都や北海道・沖縄など)が全体を押し上げています。
第一にインバウンド(訪日外国人観光客)増加や駅前の再開発事業により店舗やホテル需要が依然として活発であり、第二に平成24年12月に始まったとされる景気回復で企業業績が好調で 利便性の高い地域・駅でのオフィス需要が堅調であること、その上それらを下支えする低金利政策により開発だけでなく不動産への投資マネーの流入し易いことが要因です。 商業地価の上昇率が高い地域は北海道倶知安町(ニセコ)や京都府の八坂神社周辺・沖縄県などですが、インバウンド効果でホテルや商業施設需要が旺盛な地域です。
一方、住宅地では前述の通り下落し続けいているものの下落幅は縮小しています。これは低金利住宅ローンによる下支えと、利便性の高い地域の住宅需要が高いことによるものです。 また、商業地の地価上昇が住宅地価に波及する例もあります。北海道倶知安町などではリゾート施設増加による労働力需要がその住宅需要を喚起して住宅地価上昇率全国1位を記録しています。
しかし、好調に見える地価上昇にも懸念材料がいくつか提起されています。
まずは先年から懸念されている二極化がせまい地域でも顕著になっている事です。 先に挙げた北海道倶知安町ではリゾート地として住宅地・商業地共に地価が上昇していますが、 一方で同道内の美唄市東明では住宅地価で下落率全国1位、夕張市清水沢では商業地価で下落率全国1位となり傾向として倶知安町と大きな開きが出来ました。 東京都でも臨海地域の港区等が住宅地として人気で、本年ではその地価上昇は値ごろな北区などに波及していますが、一方で都心から離れた市部の青梅市などでは下落傾向にあります。 人が利便性を求めること、それを見越して投資マネーが選別色を強めている事が背景にあると言えるかも知れません。
二つ目、地価が高騰している地域があること。東京・大阪・京都などの商業地の地価は既にリーマンショック直前の価格を、また基準地価全国1位の東京銀座「明治屋銀座ビル」は本年4,190万円でしたが 2年連続でバブル時の地価3,800万円を超えています。今のところ大方の見方は「現在の地価は実需に即している」が大勢を占めていますが、バブルを警戒し注視が必要とする向きもあります。
三つ目に、今回の地価調査には先ごろの北海道地震や西日本豪雨などは加味されていないこと。「日本が危ない」との印象が広がりを見せれば地価上昇傾向への影響は必至でしょう。 過去の東日本大震災や熊本地震では実際に基準地価が下落しています。もっとも、これまでの災害でその後の復旧・復興の取り組みに合わせて地価が上昇した地域もありますので 必ずしも懸念材料とは言えないのかも知れませんが。
埼玉県では832地点(住宅地650、商業地136、工業地43、林地3地点)で行われました。その内、前年と比較できるのは824地点で住宅地価上昇地点は236(前年181)、商業地価上昇地点73(前年42)となりました。 平均変動率については、住宅地は0.5%で2年連続の上昇、商業地は1.3%で5年連続の上昇です。
埼玉県の住宅地平均価格は前年に比べ1,400円増の111,400円で全国4位となりました。都心30キロ圏内を中心に上昇傾向を続ける一方、 県北や秩父などは下落が続き二極化著しいですがその下落幅は減少し、全体として地価が押し上がっているようです。 上昇地域を見れば傾向が少し変化しました。JR京浜東北線沿線(大宮・浦和・川口など)の地価上昇で割高感が広がり、値ごろ感のある東武東上線沿線へ人気が集まりつつある様です。 住宅地の上昇率上位10位には東松山市、滑川町、和光市やふじみ野市などがランクインしています。割安で都心へ1時間程度内という利便性が注目を集めています。
商業地の平均価格は前年に比べ9,100円増の288,800円で全国6位となりました。前述の平均変動率は過去5年間で最大となり、 大宮駅周辺のオフィス需要が依然として拡大していること、 浦和駅や武蔵浦和駅周辺の再開発事業が進展し続けていることが主要因です。
工業地も軽く触れておきます。工業地も5年連続の上昇となりました。上昇率は昨年と同じ3.1%です。 本年は圏央道周辺よりも外環自動車道や国道16号線沿いに人気が移り始めたようです。他の用途と同じく利便性の重視傾向が見られるようです。
住宅地最高価格地点は川口市本町4丁目で451,000円(上昇率4.9%)で、商業地最高価格地点は31年連続でさいたま市大宮区桜木町2丁目で221万円(上昇率7.8%)でした。
地点別住宅地上昇率1位は東松山市箭弓町1丁目で7.8%上昇(価格107,000円)、商業地上昇率1位はさいたま市浦和区仲町1丁目で9.0%上昇(価格680,000円)でした。
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